家族・友人と工夫する
関節リウマチ生活

第4回 入浴編

監修:大阪医科大学 リハビリテーション医学教室 
教授 佐浦 隆一 先生

関節リウマチ患者さんにとって、
安全で安心して使える浴室とは?

それでは、関節への負担が少なく、安全で安心して使える浴室とは、どんな浴室でしょうか。下の図は、患者さんのために整備された浴室の一例です。ここで紹介するポイントを参考に、それぞれの住まいに合わせた工夫を、みなさんで考えてみてください。

安全な入浴環境(浴室・脱衣場)の一例

Point1
Point2
Point3
Point4
Point5
Point6
Point7
Point8
Point9

安全で安心して使える浴室のポイントを
ご紹介

上の安全な入浴環境(浴室・脱衣場)の一例のPointをクリック!

Point 1 ユニバーサルシャワーフック

シャワーの向きを自在に変えられます

Point 2 手すり(浴室用、浴槽内)

安全に浴槽へ出入りできるように設置します

Point 3 沈め椅子(浴槽内の椅子)

腰や関節への負担を和らげることができます

Point 4 浴室ボード

浴槽と同じ高さの腰を下ろすスペースを作ります

Point 5 高めのシャワー椅子

腰や関節への負担を和らげることができます

Point 6 滑り止めマット

転倒を防止します

Point 7

マットの端や浴室への入り口の段差など、
転倒につながる原因をなくします

Point 8

脱衣場は十分なスペースを確保します

Point 9

脱衣場にも、腰掛け用の椅子があると安心です

まず、脱衣スペースは衣類の脱ぎ着がしやすいように十分な広さを確保したいものです。腰掛けられるように椅子があれば、安心です。そして浴室には、必ず滑り止めのマットを敷きましょう。片脚(かたあし)立ちになるので、転倒の危険性が高くなる浴槽への出入りは、浴槽ボードを渡して、座ってから脚を浴槽に出し入れしたり、体をスライドしたりするように動かせば、安全に出入りできます。
さらに、浴槽の縁や壁には、頑丈な手すりやハンドルを設置しましょう。強力な吸盤で、壁につけ外しが可能なハンドルもあります。高めのシャワー椅子や重りのついた沈め椅子(浴槽内の椅子)があれば、立ち座りのときの関節への負担を和らげることができます。ユニバーサルシャワーフックは、シャワーの向きを自在に変えられますので、無理な姿勢を取らずにすみます。

さまざまな福祉制度を活用しましょう

関節リウマチの治療は長期にわたることが多いので、経済的、身体的な負担を軽減するためのさまざまな福祉制度を活用しましょう。たとえば、介護保険制度を活用することで、ベッドや車椅子などの貸与サービスが受けられます。また、浴室のシャワー椅子やトイレの便座の高さを補う補高便座などの購入費の補助、手すりや段差を解消する住宅改修費などの補助を受けることもできます。介護保険制度の利用は原則65歳以上ですが、関節リウマチ患者さんの場合は、40歳以上であれば要介護度に応じた内容で介護保険制度を利用することができます。

福祉制度については、こちらをご覧ください。また、詳しくは通院されている病院の医療相談室や、自治体の「地域包括支援センター」までお尋ねください。

体を洗うときには「自助具」が役に立ちます

背中や頭、足先などの手が届きにくい場所を洗いたいときには、関節の動きが制限されている方に向けてデザインされた「自助具」の利用をおすすめします。これまで、自分で洗うのは“できない”と諦めていた方も、自助具の力を借りて、無理のない程度に試してみることで、新しいなにか“できる”が見つかるかもしれません。ここで紹介するのは、浴室で使う代表的な自助具です。自助具は、介護用品・福祉用具の販売店のほか、インターネット通販などでも購入することができます。

ボディブラシ

一般的な真っすぐな柄の他に、柄の曲がったものもあり、手が届かない足先や頭を洗うときなどに重宝します。

ループ付きタオル

タオルの両端に手のひらを引っかけるループを取り付けたり、2枚のタオルを環状に縫いあわせることで、タオルの端を握らなくても背中などを洗うことができます。また、ナイロン製のタオルであれば、絞らなくても干しておくだけで(あるいは、吊るしておくだけで)、すぐに乾きます。

ミトン型スポンジ

指先を無理に曲げることなく、体を洗えます。

コラム

“部分浴”を実践してみませんか?

痛みが強くて浴槽に入ることが難しいとき、朝のこわばりや痛みを早く解消したいときなどに、手軽な部分浴で手先や足先の関節をほぐしてみてはどうでしょう。部分浴では、関節が腫れて熱を持っているときには冷やしますが、痛みが強いときなどには温めるようにします。

部分浴の方法

朝のこわばりなどに

温水による部分浴
水温:40~42度(ボウルから湯気が出る程度の温度)
こわばりや痛みのある手足を浸けて、ゆっくりと関節を動かしてください(10分程度)。
※少量の入浴剤を入れるのも、温浴効果が高まるのでおすすめです。

関節が腫れて熱を持っているとき

冷水による部分浴
水温:15~20度

痛みが強いとき

交代浴もおすすめです。
交代浴の方法:「温水(4分)→冷水(1分)」を3~4回繰り返し、温浴で終了します。

関節リウマチにやさしい入浴環境を

こわばりや痛みがあっても、家族や介護ヘルパーに頼まずに、自分ひとりでお風呂に入りたいと望まれる方がほとんどです。そして、「自分で入浴できる!」という自信は、ひとに頼むというストレスを減らし、精神的な満足度を高めることにもつながります。まずは、入浴環境を見直してみてください。転びやすい脱衣場や滑りやすい浴室、浴槽に入ったり体を洗ったりすることが関節や体の負担になる場合は、安全で使い勝手のいい設備や道具を考えてみてください。患者さんの入浴をサポートする方は、サポートされる側の気持ちを尊重しながら必要な手助けを行うように心がけてください。入浴が1日の楽しみとなるように、安心して入浴できる安全な脱衣場と浴室づくりを目指しましょう。

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