家族・友人と工夫する
関節リウマチ生活

第3回 家事編

監修:大阪医科大学 リハビリテーション医学教室 
教授 佐浦 隆一 先生

「調理」の“できる”をひとつずつ

家事のなかでも、「調理」には細かい動作がたくさんあります。料理好きな方ほど、ついつい“できない”ことのほうを気にしすぎてしまいがちですが、まずは無理をしないで、キッチンの環境を使いやすいように整えることから始めてみましょう。

キッチンに椅子を、負担を軽くする環境づくり

関節に大きな負担をかけずに、座ったままで家事ができるように、まずキッチンに椅子を置きましょう。キャスター付きであれば、流し台からガス台などへの移動も楽になります。また、よく使うものをキャスター付きのワゴンに載せておくと、棚や引き出しから取り出す手間や、ワゴンを動かす負担を減らせます。その他にも、ひねるタイプの蛇口をレバーハンドル式や自動センサー式に変えるだけで、関節への負担を軽くすることができます。一緒に、関節に優しい台所づくりを考えてみましょう。

動作のひと工夫で“できる”がひろがる

たとえば、栓抜きを使うときに逆手で持ったり、大きなスプーンで混ぜるとき親指が上にくるように持ったりするだけで、手にかかる負担はとても軽くなります。また、鍋は食材が入ると重くなるので、コンロにかけてから食材や水を入れましょう。また、片手鍋ではなく両手鍋を選んで、動かすときは熱い取っ手を掴まずに、キッチンミトンを使って手のひら全体で持ってください。コップや茶わんも両手で持つようにしてください。マグカップなどは持ち手ではなく、本体を片手で持って、もう片方の手で底を支えるように持つと指への負担が減らせます。このように、動作のひと工夫で“できる”をひろげると、調理や食事が楽しくなります。

調理を助ける自助具やユニバーサルデザイン

手先を使う作業が多いキッチンでは、だれでも簡単に使える(ユニバーサルデザイン)道具や、関節の動きが悪い方などのための自助具を活用することがおすすめです。使いやすさはもちろん、おしゃれなデザインもたくさんあって、毎日の調理や生活が楽しくなります。ここで紹介するのは代表的な調理用の自助具で、介護用品・福祉用具の販売店のほか、インターネット通販などでも購入できます。

キャップオープナー

関節リウマチの患者さんの多くが困っている、瓶やペットボトルのふたの開閉は、キャップオープナーを使うことで手や指の関節にかかる負担をやわらげることができます。

包丁&まな板

包丁とまな板のセットでは、まな板に取り付けられたバーに包丁の先端を引っかけると、包丁がぐらつかなくなるので、小さな力で押し切ることができます。また、ユニバーサルデザインの包丁を使うと、手や指にかかる負担を減らせます。

両手鍋

手のひら全体を使っても鍋の本体を持ち上げることが難しい場合には、手を差し込める程度の大きな取っ手のついた両手鍋を使うと、楽に動かせます。

このほか、一般の調理器具のなかにも便利なものはたくさんあります。電子レンジで下ごしらえをしたり、フードプロセッサーや電動缶切り、米とぎ器、泡立て器などの道具を上手に活用したりして、調理の負担を減らしましょう。

「掃除・洗濯」も無理なく“できる”へ!

毎日欠かせない家事が掃除や洗濯です。家族や友人に、気軽には頼みにくいという方も少なくありません。無理をすることはよくありません。少し工夫することで負担を軽くでき、さらに楽に体を動かすことは、日常のリハビリテーションにもなります。少しずつ、試してみませんか?

知恵を絞って、ぞうきんを絞りましょう

まず、冷たい水を使った水仕事は禁物です。関節の痛みがひどくならないように、必ず温水を使いましょう。ぞうきんやタオルを絞るときは、両手を使って絞ると手関節にねじる方向の負担がかかり、痛みや変形の原因になってしまいます。水道の蛇口に引っ掛けて、手関節をねじらないようにして絞ってください。テーブル拭きは、左右に動かすと手関節に負担がかかってしまいますから、ふきんの上に手を少し拡げて真っすぐに置き、前後に動かすようにして拭いてください。
重いものを持ち上げるときは、なるべく人に手伝ってもらってください。自分一人で持ち上げる場合は、手先や腕に負担がかからないように、膝を曲げて体をできるだけ荷物に近づけて、立ち上がるように脚の力で持ち上げましょう。運ぶときも、荷物と体が離れないようにしてください。

洗濯負担を軽くするための作業のコツ

洗濯機はボタンひとつで洗濯と脱水をしてくれますが、大変なのはその後です。濡れた洗濯物は重くなり、絡まっていることもあります。このときはマジックハンドが役に立ちます。長さがあるので手を伸ばす必要がありません。掴む動作が簡単にできるので、洗濯物を楽に取り出せます。
物干し竿の高さを低くすることで、持ち上げる動作が減って洗濯物を干すのが楽になります。また、ハンガーにかけて洗濯物を干すと、取り込む際にそのままクローゼットに収納することができるので、たたむ作業を減らせます。

日常の動作は負担を減らして効率よく

朝起きて夜寝るまで、暮らしの中ではさまざまな動作が必要です。毎日行う動作だからこそ、負担を減らして痛みなく、笑顔でこなせることがとても大切です。次に紹介するのは、日常生活をサポートする代表的な自助具やユニバーサルデザインの道具です。動作が不自由になったから使うのはもちろんですが、症状を悪化させる無理な動作を減らすために使うことも有効ですので、積極的に取り入れてみてください。

リーチャー

関節リウマチの患者さんが、ぜひ、一本持っておきたいのがリーチャーです。使う場面によって必要となる長さが違いますから、長さの調節ができるタイプが使い勝手がよく、ものを引き寄せたり、押したりできますので、洗濯物を干すときやカーテンの開閉、衣服の着脱などいろいろな場面で重宝します。

“できる”を増やして、毎日をいきいきと

関節リウマチの患者さんには、家族や友人の協力が欠かせません。しかし、できることはなるべく自分ですることも、とても大切です。自分で動かすことによって、関節の動きと力を保つことができます。また、“できた”という自信を持つことで、前向きな気持ちが生まれ、毎日の生活が楽しくなります。ちょっとした動作の工夫や便利な道具の使用で、これまでよりも少し積極的で、楽(らく)で楽(たの)しい楽々(らくらく)な毎日を過ごしてみませんか?

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