家族・友人と工夫する
関節リウマチ生活

第5回 セルフケア編

監修:大阪医科大学 リハビリテーション医学教室 
教授 佐浦 隆一 先生

脱ぎ着しやすい服を選びましょう

体をしめつける服や袖にゆとりのない服、前開きでもボタンの多い服は、脱いだり着たりするときだけでなく、着ているあいだも関節に負担がかかるので、なるべく避けましょう。手足を楽に動かせて、坐っているときも楽な、ゆったりとした服がおすすめです。しかし、着やすいからといって、同じ服ばかりでは気持ちも沈んでしまいます。明るい色を選んだり、流行のアクセサリーや小物を取り入れたりして、おしゃれを楽しみましょう。お気に入りの服を着ると、気持ちに張りがでて、おっくうな外出が楽しみに変わります。

頭からかぶる服

頸部や関節の痛みが少なければ、頭からかぶるデザインのおしゃれ着を楽しむのもいいですよ。首回りがゆったりとした服を選んで、着るときは、腕をテーブルや台の上に置いて安定させると、思いのほか楽に着ることができます。

靴下やストッキング

靴下を履く動作は、かがみこんで指先を使うので、股関節や膝関節、指先に負担がかかりますが、ソックスエイド(自助具)を使うと楽に履くことができます。ソックスエイドに靴下やストッキングをかぶせてから足を入れ、紐を引き上げて靴下やストッキングに足が入ったら、ゆっくりとソックスエイドを引き抜きます。靴下やストッキングを引っ張り上げたり、引き下げて脱いだりするときには、リーチャーを使うと、関節に対する負担を大幅に減らすことができます。

ファスナー

あらかじめファスナーにリングを取り付けておくと、指に負担をかけずファスナーの上げ下げができます。また、ファスナーのリングを引っ張るには、短いリーチャーが便利です。背中側にファスナーがついた衣服は、着る前にファスナーに紐付きフックをかけておいて、体の前で肩越しに紐を引っ張るとファスナーを引き上げることができます。

ボタン

ボタンエイド(自助具)を使うと、指の負担を減らすことができます。あるいは、ボタンはそのままにして、面ファスナーを縫いつけると衣服の脱ぎ着が楽にできます。

動作の負担を軽減してくれる便利グッズ

食事や歯、爪などの手入れは、誰かに手伝ってもらうより、なるべく自分でしたいと思いませんか?最近は、関節への負担を和らげる、さまざまな道具が簡単に手に入るようになりました。いろいろと試して、自分にあった使い勝手の良い道具を選び、毎日を気持ち良く過ごしましょう。

自助箸・自助スプーン

食事のときも、自分の体にあった使いやすい食器を選びましょう。はさむ、つまむ、持ち上げるという動作は、指に負担がかかります。軽い力でもつまむことができる箸や、握り部分を太くして持ちやすくしたスプーンなど、さまざまなものがありますので、自分にあった使いやすい素敵な道具を見つけてください。

コップ

ストロー付きの飲みやすいコップや、取っ手が大きくて持ちやすいように工夫されたコップ、裏にウレタンなどの滑り止めがついたコースターなど、楽(たの)しく、楽(らく)に食事するための、便利な楽々(らくらく)グッズがたくさんあります。選ぶことや使うことを楽しみながら、探してみてください。

歯みがき

歯ブラシのハンドル部に、滑りにくい素材でできたグリップを取り付けることで持ちやすく、また、無理なくブラッシングができます。電動歯ブラシや口腔洗浄器を利用すると、手や指にかかる負担を軽減するだけでなく、口の中を清潔に保つことができて、虫歯や歯周病、誤嚥性肺炎などの予防にもつながります。

ヘアブラシ

腕をあまり上げずに髪をとかすことができる、長い柄のブラシが市販されています。

爪切り

持つところが大きめの爪切りを選んだり、台付きの爪切りや爪切りニッパーを使ったりすることで、指先に負担をかけずに、手全体、あるいは手のひらを使って軽い力で爪を切ることができます。

動きに無理、無駄がなく、清潔さも保つトイレ環境を

トイレは、狭いところで立ち坐りと衣服の上げ下げをしなければならないので、転倒が起こりやすいところです。また、しゃがみ込む必要のある和式トイレは、下肢の関節に大きな負担がかかりますので、外出先では立ち坐りの動作の少ない洋式トイレを選んでください。自宅では、手すりをつけたり、便座の高さが調整できる補高便座を設置したり、安全に衣服の上げ下げができて関節に負担の少ないトイレ環境を整えることが大切です。また、室内灯は明るく、床には滑りにくい素材でできたマットなどを敷くと、より安全性が高まります。

温風乾燥の温水洗浄便座

こわばりや関節の痛みがある方は、ぜひ取り入れてください。排泄後も清潔に保ちやすく、洗浄後も拭き取る手間がかかりません。

補高便座

座面をひざ下の長さよりも高めに調整することで、立ち坐りの負担を軽減できます。ただし、和式トイレにかぶせて洋式トイレに改造できる便座は、坐る方向が元の和式トイレと前後逆になるので、トイレットペーパーの設置場所などにも注意してください。

トイレットペーパーやスイッチ類

トイレットペーパーや温水洗浄便座の操作パネル、手すりなどは、手が自由に使える側に設置するのが理想ですが、トイレ内の状況に応じて、できるだけ使いやすいように配置したり、リーチャーなどの道具を使ったりしてください。

さまざまな福祉制度を活用しましょう

関節リウマチの治療は長期にわたることが多いので、経済的、身体的な負担を軽減するためのさまざまな福祉制度があります。たとえば、介護保険制度を活用することで、ベッドや車椅子などの貸与サービスが受けられます。また、浴室のシャワー椅子やトイレの便座の高さを補う補高便座などの購入費の補助、手すりの設置や段差を解消する住宅改修費の補助などを受けることもできます。介護保険制度の利用は原則65歳以上ですが、関節リウマチ患者さんの場合は、40歳以上であれば要介護度に応じた内容で介護保険制度を利用することができます。

福祉制度については、こちらをご覧ください。また、詳しくは病院の医療相談室や、自治体の「地域包括支援センター」でお尋ねください。

身だしなみを整えると気分も前向きに変わります

関節リウマチ患者さんに限らず、身の回りのことやトイレなどでは、なるべく人手を借りたくないものです。また、一日の始まりに、少しでもスムーズに身だしなみを整えることができたら、気持ちが前向きになるかもしれません。日常生活を楽しめるように、生活環境を見直したり自助具などを取り入れたりして、自分で楽(たの)しく楽(らく)に楽々(らくらく)できることを増やしていきましょう。

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